2016
12.01

進路について考える視点

進路を考えるにあたり、これからの時代をどのように考え、どんな大学に進学していくのがよいのか、どんな会社に就職するのがよいのか、判断がとても難しい時代となっているように感じます。
それは3つの理由があるように思います。1つめは情報化が進み、世の中の動きがますます速くなって、政治や経済、国際情勢の変化を見通すことが難しいこと、2つめは様々な工業製品がどんどん世の中に出ていて、これまで我々の生活が変わっていった以上にこれからの生活スタイルも変わっていく可能性が高いこと、3つめは人口増加によって生じる諸問題やテロや紛争、温暖化による様々な災害の発生の予測できないこと、です。
ところで、私が高校2年生だったのは1979年のことです。例えば初代ウォークマンが発売されたのは1979年でした。今から37年前のことです。銀座ソニービルの解体にあたり、ソニーのこれまでのヒット商品を展示する催しを開催しているニュースが報道されていましたが、その中にウォークマンも展示されていました。
この1979年段階では、世の中にはCDもDVDもブルーレイも無かった。ワープロもノートパソコンもウィンドウズもアップルマッキントッシュも無かった。携帯もスマホもメールもLINEもFacebookもなかった。そもそもインターネットが無かった。インベータゲームはあったが、ファミコンはまだだった。
この37年間はデジタル技術の発達、コンピュータとネットワークの発達によって私たちの生活スタイルは大きく変わったけれども、その変化に伴う仕事を、大勢の人たちが携わって収入を得てきた時代だったということもできます。製品の開発や販売、デザインの企画にいたるまで、生活スタイルの変化に人々は生活の糧を求めてきました。
では、生徒の皆さんが大人になり、仕事をして収入を得て生活していく、これからの37年間はどんなことが起き、どんな生活スタイルとなっていくのでしょうか。37年後とは2053年です。21世紀も半分を超えます。
私はこれからの時代を考えるキーは2つあって、1つはAIとロボットの発達、もう1つはグローバリズムの進展だと考えています。
AIすなわち人工知能について、最近様々なテレビ等で特集番組が作られるようになりました。2045問題ということを提唱する学者がいます。2045年問題とは簡単に言えば人工知能が人間の知能を2045年に超えるということです。私は、今人間が行っているものづくりとデザインの仕事の多くを、人工知能とロボットが担っていくようになるだろう、と考えています。ただ、人工知能がどんなに発達しても、全く新しいものを創り出すのは人間にしかできないことだと思います。したがって、自分のもつ創造性をどうやって伸ばそうとしているのか、そして実際に伸ばすことができるか、ということが進路をどうするかというときの判断のポイントとなるように思います。具体的に言えば、この大学に入学したら創造性を伸ばすことができるのか、この会社に就職したら創造性は伸ばすことができるのか、ということが進路を決めるときのポイントであるということです。
もう1つのグローバリズムとは、必ずしもアメリカを中心としたこれまで言われているグローバリズムではなく、世界中のどの地域でもこれからの若者たちの活躍の場になるだろうという新しいグローバリズムの考え方です。1980年代から2010年代までは日本の労働賃金は高く、中国が安かったから、工場がどんどん中国にできて企業は日本から出て行った。そして現在は中国の労働賃金が高くなり、ベトナムなどに工場ができるようになってきている。しかし、現在は労働賃金の安い国々も経済成長が起こり、確実に労働賃金は上がっていく。その結果、これからの時代はどんどん国別の賃金格差がなくなり、同一労働同一賃金となっていくだろう。ただし残念なことですが、個人の所得格差は広がっていくかもしれません。働く意欲が高い若者、高い技術をもっている若者が、世界中からの仕事の依頼を受けるようになっていき、どこの国にいても、労働に見合った報酬を得ることができるようになっていくと思います。アジアのどこかで仕事をする、アメリカのどこかで仕事をする、ヨーロッパのどこかで仕事をする、でも世界のどこにいても同じ賃金を受け取り、生活することができるようになるということです。日本だけが働く場所ではなくなっていく、日本だけにこだわれば、仕事の幅はどんどん狭くなっていくということでもあります。したがって、そうした世界中を活躍の場と考える視点をもった大学なのか、会社なのか、ということが進路を考えるときの判断のポイントとなるということです。
目の前の進学、就職といった判断をする際に、単にどこの大学を受験するとか、どこの会社に入社するといったことだけではなく、長期的なビジョンをもち、様々な視点で進路を考えてもらいたいと思います。

Copyright Tokyo Metropolitan KOGEI High School. All rights reserved.