2016
12.09

勝とうとしなきゃ勝てない

今、全国のバレーボール好きに一番熱狂的に受け入れられている漫画は、間違いなく「ハイキュー!!」でしょう。
スポーツ漫画にはそれぞれの種目に定番となった名作が存在していて、例えば野球では「巨人の星」「ドカベン」、テニスでは「エースをねらえ!」、ボクシングでは「あしたのジョー」、サッカーでは「キャプテン翼」「イナズマイレブン」、バスケットボールでは「SLAM DUNK」、柔道では「柔道一直線」「YAWARA」といった作品がすぐにあがると思います。(高校生がスポーツ漫画の名作の例をあげると別の作品があがるかもしれません。)バレーボールにも「アタックNO1」という古典的名作がありましたが、「ハイキュー!!」は新たなスポーツ漫画の名作として位置付けられるのではないでしょうか。
別にバレーボールそのものが好きではないけれども「ハイキュー!!」は面白いと思って読んでいる人も結構いると聞いています。私が「ハイキュー!!」が好きなのは私自身がバレーボールを長くやっているということもありますが、作者が烏野高校以外の学校の生徒もきちんと描こうとしていて、特に試合に負けていく学校の生徒たちの思いも描かれているように感じるからです。
どんな種目でも全国大会で優勝しない限り、選手は必ずどこかで負けることを経験します。負けを経験することはつらいし悔しい。必ず経験する負けのために部活動で選手たちは一生懸命がんばります。しかし、部活動は、(運動部だけではなく文化部もコンテストや大会に出場すれば同様ですが)一つでも勝ちたいと思って努力すること、自分の限界を少しでも超えようとして自分自身との戦いを経験すること、自分だけで戦うのではなくて、友達や仲間(先輩、後輩)と思いや気持ちを共有して努力すること、そうした努力を支えてくれる人に感謝する気持ちをもつようになること、そして負けたときにその負けをどのように受け入れるかによって、さらに人間として成長するチャンスが生まれることに意義があると思っています。
タイトルの「勝とうとしなきゃ勝てない」は、烏野高校のキャプテンが、かつて中学生のときに言った言葉で、あまりバレーボールが強くない高校に進学したキャプテンの同級生がこの言葉を思い出して全力で奮闘する場面に登場しました。この言葉だけを切り取っても何の感動はありませんが、この場面の漫画を読むと、(あるいはテレビでアニメを見ると、)後悔の多い人生を歩んで歳を重ねた大人にとっては、こうした当たり前の言葉のもつ重みがズンと腹にこたえたりするものです。
「ハイキュー!!」は舞台にもなっています。「ハイパープロダクション演劇ハイキュー!!」という名称で、すでに「頂の景色」「烏野、復活!」の2作品が公演されました。私は舞台そのものではなく、ライブビューイングという映画館での実況中継で2作品の公演を見ました。その時、今どきの舞台演劇はなんて進んでいるのだろう、ということに感心しました。そもそもバレーボールを演劇の題材にするなどということは到底無理な話と高を括っていたのですが、実際に見てみると、そのように既成概念で考えることはとんでもないということが分かりました。舞台効果として映像や音響がふんだんに使われていて、それによって、こんなにも臨場感がある世界を生み出すことができるのだ、という感動がありました。こうした現在の演劇の効果手法に無条件で感心してしまい、「ハイパープロダクション演劇ハイキュー!!」の公演内容やキャストの表現といったことよりも、世の中の動きに疎くなってはいけないものだという反省をしきりに感じたところです。

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