2016
12.22

オリジナリティについて1

東京オリンピック・パラリンピックについての世間の関心は、競技会場の変更や開催費用の問題に移ってしまい、エンブレムのデザイン変更は過去のこととなってしまいました。市松模様の新しいオリンピック・パラリンピックのエンブレムはすっかり街の中に溶け込んで、街行く人々の関心を取り立てて引くこともなくなっています。
しかし、私はデザインのオリジナリティを考えるときに、東京オリンピック・パラリンピックのエンブレム変更は、常に先鋭的な問題提起をし続けるのではないかと感じています。
東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムのデザインが盗作であると主張したのは、ベルギーにあるリエージュ劇場のロゴの作者でした。この主張に対して、東京オリンピック・パラリンピックエンブレム作者は、作成したモティーフについて、「Tokyo(場所)・Team(結束)・Tommorow(未来)」の「T」で、そのデザインに3つのメッセージを持たせることで、東京という街(あるいは日本という国)の世界のスポーツ祭典にかける意気ごみを表現しようとしていると説明し、「Théâtre de Liège」のTとLを表現したロゴとは全くコンセプトが異なると強調し、盗作ではないことを説明しました。この段階で東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムの変更が必要となることは想像できず、一般の受け止めとして、たとえリエージュ劇場のロゴの作者が裁判を起こしたとしても、そうしたことはデザインの世界ではよくあることで、さほど重要ではないという認識でした。
しかし、この後事態は急変し、予想もつかなかった問題が示されるようになります。一つは東京オリンピック・パラリンピックの作者のデザイン事務所が過去に行っていたデザインの中に、明らかに盗用を疑われるものがいくつか出てきたことです。コンピュータやインターネットが現在のように発達する以前であれば、デザイン事務所の作品にはどのようなものがあり、それが世界中で制作されるデザインと類似性を有するかどうかを指摘することは不可能であったろうと思います。誰かが、このデザイナーの他の作品に盗作はないのだろうか、ということを疑った場合、グーグルでちょっと検索するだけで、膨大な資料をデータとして入手することができる、すなわちデータとなっていてWEB上に存在する資料であれば、いとも簡単に手に入れてデザイン作品を比較、対照することができる、ということが立証されました。そして、私たちが生きている時代がそういう時代であることを一般人が初めて認識した事例となったのではないかと思います。
もう一つは東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムを決定する際の、選考の透明性についての問題提起です。東京オリンピック・パラリンピックのエンブレム選考に参加するためには、非常に高いハードルが設けられていて、選考に参加できるデザイナーは超一流のごく限られた人たちだけでした。そのことが、選考は平等に行われるのではなく、最初からどのデザイナーの作品になるのか決まっていたのではないか、という疑いを抱かせてしまいました。さらにそれだけでなく、選考結果が決まってから、非公開でのデザインの変更を行っていたことまでが、明らかにされてしまいました。選考方法が間違っていたのであれば、もう一度選考をやり直すべきだという考えや意見が大勢を占めていくこととなりました。しかも、盗作を疑われているのであれば、なおさらやり直すべきだろう、と一般の人々は考えるようになりました。このことは、何かものを決めていく際に、その経過の透明性が問われる時代となっていて、例えば築地市場を豊洲に移す際の「盛り土」問題などで、誰がどのような経緯と経過で決定したか大問題となったのと質的には同じ内容であると考えられます。

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