2017
01.04

工芸とデザインの境目

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
さて、金沢21世紀美術館で「工芸とデザインの境目」という展覧会が、10月8日から3月20日まで開催されています。展覧会の監修はプロダクトデザイナーの深澤直人氏です。
美術館のホームページには展覧会の概要として、
「「工芸」か「デザイン」か―。工芸とデザインはものづくりという点では同じであるが、両者は異なるジャンルとして区別される。しかしながら、それらをつぶさに観察するまでもなく、両者の間には「デザイン的工芸」また「工芸的デザイン」とも呼べる作品あるいは製品があるように思われる。本展覧会では、「プロセスと素材」「手と機械」「かたち」「さび(経年変化)」といった観点から工芸とデザインを見つめ直すことによって、それらの曖昧模糊とした境目を浮き彫りにする。それと同時に、最先端技術の発達などによって多様化が進む両者の新たな地平を考察する。」とあります。
また、監修者のことばとして「工芸とデザインの違いを解く人は多い。ものづくりとして捉えればそこに境目はあるのだろうか。作者自身の手で作るものを工芸と言い、デザインもその工程に含まれる。デザインはものをデザイナー自身では作らない。工芸は「作品」と言いデザインは「製品」と言ったりもする。工芸を生み出す手の技はデザインの機械の精度と比べても仕方ないがそこに価値の違いが現れる。生み出そうとする気持ちは同じであっても工芸とデザインは相入れようとしない。そこに境目はあるのか。それともそれは「デザイン」なのかあるいは「工芸」なのか。問うてもしょうがない問いをあえて突きつけてみようとするのがこの展覧会の目論見である。」とあります。
展示の様子をウェブで調べてみると、展示スペースの真ん中に線が引いてあり、左側が工芸、右側がデザインになっていて、様々な作品や生産品が置かれている位置によって、より工芸的であるのか、デザイン的であるのかを表わすようになっています。物によっては真ん中の線の真上に置かれ、工芸でもありデザインでもあることを示している場合もあります。例えば鉄瓶や箒は真ん中に置かれています。一方で、石垣は工芸側、コンクリート壁はデザイン側に置いてあり、はっきりと分類されています。単純な配置による分類を示すだけではなく、監修者である深澤氏の解説も付されているようで、見る人が「ああなるほど」と感じたり、「いやいや自分だったらもうちょっとこっち側に置くのに」と思わせたりするなかなか面白い展示となっているようです。展示品にも前述のもの以外には自動車があったり、インテリアがあったり、コンピュータ、タイプライター、漆製品など多岐にわたっているようです。
深澤氏自身が工芸とデザインとを明確に分けることの難しさを述べていて、その双方を含むものが数多く存在し、はっきり分類することができずに、線の真上に置くものが多数展示されているのも興味を感じます。都立工芸の皆さんは、こうしたことを意識して作品制作を行っているでしょうか。工芸とは何だろう、デザインとは何だろうと考えるきっかけになるとても興味深い展覧会だと思いました。金沢にはなかなか行くことができませんので、ウェブで関連の記事を調べたり、深澤氏の著作に触れたりするのもいいのかもしれません。行き詰っているときに、壁を突破する力をもらうこともできることでしょう。

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