2017
02.01

第一主義の危うさ

日本は外国の文化を積極的に取り入れている時期と、あまり積極的ではない、むしろ外国の文化を拒絶している時期とが、歴史的に交代しながら起きています。古くは渡来人たちが大勢日本にやって来て、中国や朝鮮半島の文化や技術を日本に伝えた時期や、遣隋使や遣唐使を中国に派遣した時期、近くは明治時代や第二次世界大戦後のアメリカ文化を積極的に受け入れた現在に続く時期は、積極的に外国文化を取り入れる時期でした。一方、遣唐使廃止後の平安時代や、鎖国政策をとった江戸時代、戦前の昭和時代などは、外国を拒絶した時期ということができるかもしれません。
面白いと思うのは、外国文化を積極的に受け入れた時期に日本にやってきた外国の技術や文化が、外国を拒絶した時期に日本独自の技術や文化に進化していくことがあるということです。例えば製鉄の技術は、弥生時代後期から古墳時代にかけて朝鮮半島からの渡来人によってもたらされたと考えられているようですが、日本に多く産する砂鉄を採取して製鉄するたたら製鉄の技術へと進化していきました。そして、たたら製鉄によって生まれた玉鋼(たまはがね)から日本刀が生まれることになりました。日本にやってきた技術が独自の発達を遂げたよい例ではないかと思います。先日の定時制マシンクラフト科の溶接の授業で市民講師の先生が鉄のお話をされ、鋼材の硬度について炭素の割合や「焼き入れ」の説明があり、とても興味深く聞くことができました。たたら製鉄は江戸時代まで製鉄技術として進化し続けながら用いられましたが、江戸末期の黒船の来航に代表される欧米列強の進出に対抗するための大砲の鋳造する際には、たたら製鉄でつくった鉄では十分に丈夫な砲身をつくることができず、すたれていったという記録があります。伝統工芸と呼ばれる分野やその他さまざまな技術分野でこうしたことが日本では起こっているように思います。
さて、アメリカでは新しい大統領が就任し、アメリカ第一主義を唱え、製造業の復活と雇用の拡大を狙った政策を進めようとしています。これまでの政権と全く異なった方向を打ち出そうとしていることから、世界中に困惑が広がっている反面、アメリカ製造業の活性化に対する期待感から、経済活況が生まれる可能性もうかがわれます。しかし一方で特定の国を指定して入国を拒否する政策も打ち出したため、アメリカ経済を支えているIT産業から厳しい反対を受けています。豊かな社会や経済的な発展を進めていくには、多くの異なる考え方をもった国々が協調し、人々の自由な往来がきわめて重要であると考えます。ある面から見た場合の正解が、別の面からみた場合には間違いであることは珍しいことではなく、ある立場にとって正義であることでも、別の立場に立った時には諸悪の根源であることは、往々にして起こることです。いろんな立場や考え方をどのように調整していくか、アメリカだけではなく、世界中で取り組んでいかなければならないことでしょう。
日本はかつて外国の文化を取り入れていない時期に、独自文化を育てることができましたが、これからの時代では、もはやそうしたことができるとは到底思えません。他の様々な考え方をもった国々とどうやって協調し、相互関係を築いていくかが大切になってくると思います。これを都立工芸の立ち位置に置き換えると、都立工芸がこれからますます発展していくためには、他の普通科高校、工業高校、大学や専門学校、企業や事業所、専門的な技術や知識をもっている方とよく協力していかなければならないと思っています。

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