2017
03.10

自分自身の人生のデザイナーになること(卒業式式辞)

ただ今、卒業証書をお渡しした卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。そして、今まで暖かくお子様を見守り、今日の日を迎えられました保護者の皆さま、誠におめでとうございます。
 また、卒業式の開催にあたりまして、ご来賓の皆様には、ご多忙中にもかかわらずご参列いただきましたことを、心より御礼申し上げます。
 
さて、あらためて言うまでもなく、都立工芸高校は、ものづくりとデザインを学ぶ都内唯一の専門高校として、これまでも多くの卒業生を送り出してきました。今のこの席にいる卒業生の皆さんも、各科による専門性、学習内容の違いはありますが、幾多の課題制作、実習授業を乗り越え、知識と技術を身に付けて、今日の日を迎えました。
私は、都立工芸高校で生徒たちが学んでいるものづくりやデザインは、これからますます社会から必要とされるようになるだろうと考えています。例えば我が国における少子高齢化は一層進んでいますが、この少子高齢化は日本だけの問題ではなく、お隣の韓国や中国をはじめ、世界中の多くの国で急激に進んでいると言われています。
高齢化した社会で求められるのは、これまで以上に安全で、かつ安心して生活できる環境であり、使いやすい身の回りの品々であることは言うまでもありません。若くて元気で体が自由に利くときには気にならなかったことが、年を取ると、とても大きな障害となり、生活しにくさ、不便さを発生させていくことになります。年を取っていろいろと不自由が起きるようになってきても、若くて元気な人と同じ生活の質を共有できるようにしていかなければなりません。こうした考え方は、一般的にバリアフリーやユニバーサルデザインとして、今や多くの人々に受け入れられています。インターネットを検索すると、ユニバーサルデザインの商品を多数見ることができますが、こうした新しい考え方を具体的に進めていくことができるのは、ものづくりやデザインを学んでいる都立工芸高校の卒業生ではないかと思います。

卒業生の皆さんは進学する人、就職する人、進路は様々でありますし、今、心に抱いている将来の夢も多種多用であると思います。広告デザイナーになって自分の作品が街中で貼り出されるようになりたい、宝飾デザイナーになってブライダルジュエリーのデザインを手掛けるようになりたい、使った人誰もが便利さを感じる家具のデザインをやってみたい、などなど、就職先の会社での仕事への夢、大学で勉強したいことの希望、いろんな夢や希望をもっていると思います。そうした夢や希望は、都立工芸高校を卒業する皆さんしかもつことができないものであり、他の高校では学ぶことができない「デザイン」や「ものづくり」を学んだ皆さんだけがもつことができる夢や希望であると考えます。そして、その夢や希望を、みなさんが進路先で実現することが、例えばバリアフリーやユニバーサルデザインといった新しい考え方が一層社会の中で進んでいくような、これからの社会全体の在り方やライフスタイルの革新、進歩につながっていくと信じています。

確かに皆さんが巣立っていくこれからの社会は、見通しのはっきりしない、不安定な社会であるかもしれません。国際協調を否定するような不寛容な考え方が台頭してきています。紛争やテロ、難民の問題はなかなか解決の糸口を見つけることができません。世界人口の増加、資源や食糧の争奪、地球環境の悪化、富の偏在といったいろんな世界的な課題があるとともに、我が国においても自然災害が度重なって発生するなどの不安もあります。東京2020に向けて日本の社会全体が盛り上がっていこうとしている反面、平和で豊かな社会をどうやって維持していくかということも考えていかなければなりません。

しかし、これからの社会がどのように変化していっても、卒業生の皆さんが、自分の夢や希望を達成するという目的のために、自分の人生を自分でデザインできる、そういう人になっていって欲しい、皆さん一人一人が自分自身の人生のデザイナーでいて欲しい、と願っています。
そのためには社会の将来を見通す先見性をもち、自分の知識や技術を常に新しいものにしていく努力を継続し続けるとともに、様々な人とのコミュニケーションを厭わない態度も必要になってくることでしょう
繰り返しますが、みなさんは自分自身の人生のデザイナーにならなければなりません。自分の意思で自分の人生を切り拓き、夢や希望を実現するための努力、目的を達成するための能力をもつことを願っています。

毎回繰り返してきましたが、優れたものづくりは人類の進歩と福祉につながり、美しいデザイン人々を幸せにすると考えています。皆さんには、工芸高校卒業後にますます自分の力を磨き、世界の人々、社会全体に幸せをもたらす人になってもらいたいと思います。

最後になりましたが、保護者の皆様には工芸高校の教育活動に御理解と御協力を賜り、本当にありがとうございました。心から御礼を申し上げ式辞といたします。

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