2017
06.20

なぜ「Frozen」の日本でのタイトルが「アナと雪の女王」なのか

先日まで生徒昇降口で全日制グラフィックアーツ科の写真展が行われていました。校外見学会で上野動物園に行った時に撮影した作品です。動物の一瞬の動きや表情をよく捉えているなあと感心する作品がいくつもありました。
一緒に作品を見ていた全日制国語科の松山先生が「作品の良し悪しも気になるけれども、どんなタイトルを付けているか、ということも気になります。」ということをおっしゃいました。一瞬の動物の動きに意味を与えたり、作品としての価値を高めたり、あるいは見る人の視点や方向性を定めたりするのが作品のタイトルである、だからこそ、どんなタイトルを付けるかで作品は生きもするし、死んでしまうこともある、といった主旨のお話をして、「これなんかいいタイトルですね」といくつかの作品を指しました。
作品のタイトルということでは、私にはマルセル・デュシャンの「泉」がすぐに思い起こされました。デュシャンは20世紀初頭を中心に活躍した現代芸術の草分け的存在で、「泉」はデュシャンが「美術とは何か」というテーマを最も大きく投げかけた作品です。どんな作品かということについては、工芸生であれば必ずどこかで聞いたことがあるかと思いますが、工業生産されている便器に架空の人物の署名をして「泉」というタイトルを付け、展覧会に出品したものです。1917年のことでした。出品された「ニューヨーク・アンデパンダン展」では展示を拒否するという経緯もあり、物議を醸したということです。
「泉」のどのように解釈するか、ということについては、世界中のとてもたくさんの人たちが意見を述べていますので、インターネットで調べていただきたいと思いますが、私としては、既成概念から自由になってものを見ること、そして、既成概念からはずれてものと見た場合、これまで気が付かなかったものが、芸術として存在し得ることが提示されたと思います。そして、それが可能となった「仕掛け」は、便器に「泉」というタイトルを付けたことであったと考えます。
デザインや作品にどのようなタイトルを付けるかでその作品の評価が変わってしまうことは往々にして起こります。特に展覧会や映画などでは商業的に成功させなければならないため、タイトルをどのように付けるかは死活問題であるに違いありません。前々回のこのブログではディズニーアートを取り上げましたが、例えばディズニーの映画作品のタイトルは、作品をヒットさせるために、大変な努力が払われて名付けられていることを感じます。なぜ「Frozen」の日本でのタイトルが「アナと雪の女王」なのか、「Moana」という原題名であるので「モアナ」でよいはずなのに、なぜ「モアナと伝説の海」なのか。タイトル作成やキャッチコピーの担当者が何となく付けたり、インスピレーションで付けたりということではなく、いろんなマーケティング調査を経て、タイトルの決定が行われているのではないかと想像します。
タイトルを付けるという行為は、作品の中身をよく判断して、作者が意図する何かしらの方向性を付与して意味付けを行うことなので、タイトルにこだわるのはクリエイターとして当然のことです。今回のグラフィックアーツ科生徒作品のタイトルも、意図としたねらいを効果的に果たしていたものが一定数以上あったことはさすがでした。これからもより効果的なタイトルを付けることを期待します。

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