2017
09.07

2学期始業式校長講話

 昨年末に文部科学省から発表された中教審答申には、子供たちの65%は将来、今は存在していない職業に就く(キャシー・デビッドソン氏(ニューヨーク市立大学大学院センター教授))という予測が記載されています。学校では生徒たちに将来どんな職業に就きたいか、そのために工芸高校ではどんな勉強をすべきであるか、工芸高校卒業後にどんな大学のどんな学部、学科に進学するのがよいか、という進路指導を行っていますので、キャシー・デビッドソン氏の予測が正しいのであれば、進路指導を根底から見直す必要があるのではないか、と考えられるかもしれません。
 では、今存在していない職業とはどんな職業なのでしょうか。
 今年の4月にソニー生命という会社が発表した中学生の将来なりたい職業の男子の3位と、女子の10位に「YouTuber」が入りました。まだ職業選択が現実的ではない中学生の夢や希望が反映した調査結果だと思います。この「YouTuber」という職業はこの1年~2年で多く見かけるようになり、またこの夏休みの間、インターネット上では、「YouTuber」に投資する「VALU」において不正が行われたのではないか、ということが話題になったお陰で、新しいことに疎い中高年の年代の人たちにもすっかり定着したのではないかと思います。しかし、少なくとも私が校長になった6年前には存在していない職業でした。動画を制作してYouTubeに投稿して、その動画を利用者が再生するたびに広告収入を得ることができる、というシステムが立ち上がり一般化して、それにより収入を得ることができるにようになったのはこの5年ぐらいのことと思います。今では「はじめてしゃちょー」「HIKAKIN」といった有名「YouTuber」が存在するようになっているそうで、年間に数千万円、数億円の収入を得ている、とインターネットに記載されていました。6年前、まさに「YouTuber」は「今存在していない職業」でした。
 インターネットやSNSに関わって「YouTuber」のように、一般化していない新しい収入を得る方法がすでに存在しているかもしれません。あるいは様々な新しい技術開発の周辺では私たちには知られていない職業がすでに始まっているのかもしれません。あと何年か経って私たちが職業として認知するような仕事がすでにあるのかもしれない、そんなふうに感じています。
 では、新しい職業は、今皆さんが勉強していることと全く別次元の知識や能力が必要とされるか、というと、私は決してそんなことはないと考えています。
 皆さんがこれまでに存在しない新しい職業に就いたとしても、その職業で求められるのは、これまで存在した職業と同様に、社会の一員として、あるいは会社組織の一員として、きちんと義務と責任を果たすこと、発想力や創造性を発揮して業務の発展に力を尽くすことであることに変わりはないからです。確かに、今皆さんが勉強しているワードやエクセル、イラストレータやフォトショップといったソフトはこれからもずっと使い続けられていくかというと、そんなことはないと思います。就職先では新しいタイプのソフトを使用する仕事をするようになるかもしれないし、ウィンドウズのOSやアップルのOS以外のOSでコンピュータの仕事をすることになるかもしれません。しかし、そうした技術革新に対応できる能力は、今現在使われている技術や知識を身に付ける、伝統技法の技術や知識を身に付ける、国語や数学、といった教科の学力を身に付けることによって、技術革新に対する汎用的な力、応用力の向上につながってくるのです。
 この夏休み中に最上級生の中には会社見学に行った人がいると思います。またAO試験があって進学先の大学が決まった人もいると思います。2学期は最上級生にとって、とても忙しくて自分の進路を決めていく時期となります。進路が決まった人は決して安心せずに、進路決定後にもこれまで以上に学校で勉強している内容を身に付けてください。そのことが卒業後の人生の応用力につながっていきます。下級生はそうした最上級生の様子を見ながら、自分の将来のためにがんばる2学期としてください。特に2学期は工芸祭があってその準備で忙しくなると思います。高い成果をあげる2学期となることを願っています。

Copyright Tokyo Metropolitan KOGEI High School. All rights reserved.