2017
10.31

2017工芸祭御礼

工芸祭には台風の大雨にも関わらず、5500人を超える大勢の方に御来校いただき、本当にありがとうございました。特に日曜日は朝からの大雨で、工芸高校までいらっしゃるだけで大変だったと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
さて、今年の工芸祭のテーマは、「大正ロマン・明治レトロ〜110年前の時代〜」でした。都立工芸は創立明治40年で、今年が110周年にあたり、この5月に創立110周年記念式典を挙行したことにちなんだテーマを設定しました。展示や装飾、あるいは展示案内の生徒の服装など、テーマに沿ったものとなっていたことに、お気付きいただけたのではないかと思います。
こうしたテーマに沿った展示や装飾を見ながら、明治レトロや、大正ロマンをイメージできるデザインはとても作りにくいかもしれないと思いました。都立工芸が創立した場所は銀座すぐ隣の築地万年橋のたもとでした。明治40年頃の東京銀座の写真は残っていて、インターネットを検索すれば当時の銀座の様子はすぐに見ることができます。また、図書資料を調べれば、街行く人々の服装、風俗も見ることができます。けれども、私たちの知識の中には明治終わり頃から大正初めにかけて、街の風景やそこを歩く人々についての確たるイメージがあまり無いのです。明治初めの文明開化期であれば、鹿鳴館での洋装、ドレスを着た婦人たちの姿が思い浮かびますし、昭和初期の戦争期であれば、男性は国民服やゲートル、女性は木綿モンペの姿が思い浮かびます。最近、大阪の高校がダンスの全国大会で「バブル」というテーマで踊った「ダンシングヒーロー」がウェブ上で話題となっていますが、お母さんやおばあちゃんに用意してもらったというステージ衣装は、バブルファッションはかくあるものというイメージを見事に具現化していました。
大正期は「モガ」「モボ」の時代ではありますが、私たちの知識の中にはどんなファッションであったか定着していません。インターネットで検索すると、いまから100年前の日本の女性たちが、とても素敵なおしゃれをして銀座の街を歩いている様子がうかがえます。また、女子生徒(女学校)の通学服は、大正年間は和装(海老茶式部スタイル)が中心で、関東大震災後に洋装(セーラー服)に切り替わっていきました。この時代の女学生を描いた漫画「はいからさんが通る」が、大正期の風俗で一番共有されているイメージかもしれません。そんなわけで、生徒諸君が明治レトロ、大正ロマンを表現するにとても苦労した形跡がいろんなところにありました。時代を表現するとは難しいものです。

展示されていた生徒たちの作品は、今年も力作が並び都立工芸のものづくりやデザイン教育の質の高さを感じていただけたと思います。特に今年の工芸祭は(もしかしたら私がこれまで気が付いていなかっただけかもしれませんが)、製図とかデッサン、平面構成、パターン構成といった基礎基本の実習作品の質がとても高かったです。これらの基礎基本の実習作品は、生徒諸君が都立工芸の専科の先生方から、いろいろときめ細かく指導を受けながら完成させた作品です。科学の研究には基礎研究が重要であるように、ものづくりとデザインには基礎基本の実習がとても重要です。これらの作品の質の高さが、今後の工芸生の発展力、展開力につながっていくと思いました。
完成された作品だけではなく、科によってはデザイン帳、クロッキー帳等を展示している部屋もありました。最初に思いついたイメージが乱雑に書き込まれていたり、スケッチやデッサンのアウトラインが描かれていたりして、まだ作品とは呼べない段階を見ることができました。しかし、混沌としている段階での生徒たちの発想がとても素晴らしく、さすが工芸生であると自慢したくなりました。パワーやエネルギー、突破力のようなものが満ち溢れていて、作品として完成を目指す中で、このパワーやエネルギーをさらにどうやって高めていくか、生徒たちにはがんばって欲しいと感じました
販売や体験も今年も大勢の方に利用していただきました。生徒諸君が制作したものを大勢の方に使っていただけるのはとても嬉しいことですし、光栄なことです。
生徒たち一人一人がそれぞれの役割を果たし、工芸祭を盛り上げていました。生徒諸君は工芸祭の準備の中で学んだこと、習得した知識や技術はこれからの実習で生かしてくれると思います。そして。最上級生は全日制も定時制も卒業に向けて課題制作を完成させていかなければなりません。全日制は卒展があります。より高いレベルでの作品の完成を期待できますので、卒展にもどうぞ御来場ください。(2018年3月2日〜3月4日 於東京都美術館)

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