2017
08.28

あるベテランの先生のお話

今年の夏、私の子供の通っている学校の体育科のベテランの先生からお話をうかがう機会がありました。その先生は御自身がテニスの選手で高校生の時はインハイ、大学生の時はインカレでトッププレーヤーとして活躍した方です。
お話はスポーツに取り組んでいる子供を育てる際に、親として何を心がけるかという内容でした。技術の向上やより高い目標を目指して練習していくと、子供はいろんな試練に直面し、つらい気持ちや苦しさを親にぶつけてくる。たいがいの場合、突き詰めていくとつらかったり、苦しかったりする原因は、自分自身にある場合が多いけれども、子供はその原因が自分にあることを認められないので、指導者や他の子供のせいにする。その時に、親が自分を乗り越えようする子供の応援を怠ったり、子供と同じレベルで、指導者や他の子供のせいにして問題の解決を回避してしまったりすると、子供が人として育っていくチャンスを奪うことになる。こうした時の親の一番の役割は子供の心を育てること、子供が人間として温かい心をもつように育てることだ。人間として温かい心を持つことが、子供自身でいろんな問題を乗り越えられるようになるとともに、スポーツの技術の習得や向上につながる。そして人間として成長することによって、スポーツ選手としても強い選手になることができる、そういう話でした。
私はスポーツをがんばっている子供の父親としてお話をうかがいました。しかし、ベテランの先生のお話はスポーツ選手の育成としての話としてだけではなく、他の分野においても共通するお話であるように感じました。親は子供が失敗するのを見るに忍びないため、あるいは失敗するといろいろ面倒であるため、先に回り込んで地ならしをすることがあります。子供はこれまで困難の壁を自力で乗り越える経験を積んだことがないまま思春期を迎えます。もちろん、子供は親が先回りして歩きやすい道を用意していることを知らないので、全部自分でやってきたと感違いしていますが、力が十分に育っていないので、自分でなんとかしなければならない困難に直面すると、取り乱してしまうことになる。でも子供が自力で困難な問題を解決できるようになるには、親が子供の替わりをしたり、他に責任を転嫁したりするのではなく、子供が自分で解決できる心を育てることが親の務めなのだろうと思いました。
ものづくりやデザインはスポーツと同様に、あるいはそれ以上乗り越えなければならない壁があるかもしれません。自分が子供の時は、親に育てられていることなど何も考えずに生きてきました。親になってみるとあれこれと思い悩むことが多くあり、ベテランの先生の話はいろんなことを考えさせていただく機会となりました。

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